遺言書の方式が決まったら、次に遺言書を作成するために必要な資料を集めましょう。集める資料は、主に「相続人に関するもの」と「財産に関するもの」になります。公正証書遺言を選択する場合は、一定の資料については公証人に提出する必要があるため、資料収集は必須となります。自筆証書遺言の場合は、資料収集は特に必要ではありませんが、資料に基づいて正確に記載するためにできるだけ準備しましょう。また、自筆証遺言は検認が必要なため、相続開始後すぐに手続きに移れるように、一定の資料は遺言書と一緒に保管するようにします。
公正証書遺言を作成する場合は「遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本」が必要になります。自筆証書遺言の場合は特に必要ありません。しかし、公正証書遺言・自筆証書遺言どちらの場合でも、しっかりと推定相続人を確認するために、以下のものを準備して相続関係説明図を作成しましょう。なお、推定相続人とは、現時点で自分が亡くなったと仮定した場合に、相続人となるはずの者をいいます。
①自分の生まれたときから現在までの戸籍謄本
②推定相続人の戸籍謄本
相続人は、①配偶者と②血族関係にある者となります。
①配偶者は常に相続人となります。婚姻届を提出していない夫婦(内縁関係)に相続権はありませんので、財産を渡したいときは遺贈することになります。
②血族関係にある者については、
第一順位:被相続人の子(実子、養子)
第二順位:被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)
第三順位:被相続人の兄弟姉妹
※順番が上の者が存在すれば、下の者は相続人にはなりません。
法定相続分とは、相続人が複数いる場合の財産の分ける割合のことで、以下のように民法で定められています。血族関係の相続人が複数いる場合は均等の割合になります。ただし、相続人が兄弟姉妹の場合、両親の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血兄弟)は、両方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟)の1/2となります。
※嫡出子と嫡出でない子の相続分について
従来は嫡出でない子(法律上の婚姻関係にない男女間の子)の相続分は、嫡出子の1/2でしたが、平成25年9月4日の最高裁判決により同じ割合になりました。
配偶者 | 血族関係の相続人 | |
---|---|---|
第一順位:子 | 1/2 | 1/2 |
第二順位:直系尊属 | 2/3 | 1/3 |
第三順位:兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4 |
法定相続分は遺言書がない場合の分け方になりますので、遺言書を作成することにより、この法定相続分とは異なった分配ができるようになります。ただし、後に説明する「遺留分」には気を付ける必要があります。
被相続人が亡くなる前に、相続人となるはずだった子が死亡しているときや欠格・廃除を理由に相続権を失ったときは、その者の子(被相続人の孫)が相続人となり、これを代襲相続といいます。また、その子(被相続人の孫)も死亡などしている場合には、さらにその子(被相続人のひ孫)が相続人となり、これを再代襲相続といいます。なお、直系尊属には代襲相続は認められていませんので、祖父母が相続人になるのは、父母がともに亡くなっている場合となります。また、兄弟姉妹には再代襲が認められていませんので、相続人となるのは兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)までとなります。
遺言書に記載する財産の資料を集めます。不動産であれば、法務局で不動産登記簿謄本(全部事項証明書)を取得します。この書類は、不動産を含んだ公正証書遺言を作成する場合にも必要になります。預金などは、金融機関名・支店名・口座番号などが記載してあるページと一番最近の残高が記載されているページの写しや、残高証明書などを用意します。自動車であれば車検証の写しを用意しましょう。
財産に関する資料を集めたら、それらをもとに不動産や預貯金、株式、自動車などを一覧表にまとめた財産目録を作成します。遺言書の作成にあたり、財産の記載漏れを防ぎやすくなりますし、また財産の分配を決定しやすくなります。